いつもあたたかいご支援ありがとうございます。
2016年度は、カンボジア事業が大きな成果を出すことができた1年になりました。
その中でも工房で働く女性たちがライフスキルトレーニングを通じて
大きく成長できたことは、SUSUの商品の成長にも繋がりました。
今後も商品とトレーニング両方の質を高めていくことで
より多くの女性たちが社会で活躍できるように取り組んで行きます。
今回は、年次報告書2016より抜粋し、
共同代表青木健太が、今後のカンボジア事業について語った記事をお届けします。
「ライフスキル教育は、子どもが売られない世界をつくるために必要な基盤となるはずだ。」
と言い切る、青木の「自立のその先に描くビジョン」を是非お読みください。
2016年度年次報告書はこちら
10年以上にわたって7%の経済成長率が続き、国全体で現在12の経済特区が稼働し、
海外企業が進出、雇用は確実に増えている。
そもそも2002年の事業開始以来、
NGOとして雇用をつくらなければならないと考えてきた僕たちも、
徐々にNGOに求められる役割が変わってきていることを感じていた。
ある忘れられない台詞がある。
知り合った大企業の方から
「青木君、年末までに5,000人採用したいから、
毎月100人でも人を紹介してくれないか。きちんと雇用するから」
という話を聞いたときである。
当時一人でも多くの人を雇おうと四苦八苦していた僕たちにとって、
まさに時代の変化を実感する瞬間であった。
仕事そのものが企業によって作られ、
子どもが売られる問題が解決に向かってきている。
その一方で、自分たちの活動を振り返り、
ともに働いていた村の女性たちとの対話を通じて、
自分たちの経験を活かして
どうカンボジア社会に貢献することができるのかを考え続けた。
それに気づくきっかけになったのは
コミュニティファクトリーを卒業して企業に就職したある女性に起きた出来事だった。
彼女は、都会の工場で働きはじめ、給料も農村の平均月収にくらべれば
4倍にもなる良い仕事につけたと僕たちは喜んでいた。
しかしそんな彼女はたった4日でその工場を辞めてしまったのだ。
都会で住む家がみつけられない、一緒に働く人と仲良くできない、
といった問題を解決することができず農村に帰ってきてしまった。
新しい環境に慣れ、人との関係を作りながら、問題を解決して前に進む力、
それが十分に育っていないとカンボジアの発展の恩恵を受けることも難しいのだと
僕たちが思い知らされた苦い経験だった。
彼女は幸いまたコミュニティファクトリーで働くことができたが、
果たして他の人はどうか。
そうして僕たちは、その力をライフスキルと名付け、
それを身につけ、「前向きにワクワク生きる」人生を
すべてのカンボジアの人たちが送れるようになってほしいと考えた。
それが僕のライフミッションであると
確信できた大きな出来事であった。
ワークやゲームをベースにしたライフスキルトレーニングを楽しむ女性たち。
働く場でありながらもより学ぶ場へと変化し、
"ものづくりを通した人づくり"をおこなっている。
そこで、女性たちが身につけるのは、
社会へ出て活躍するための力、ライフスキルだ。
人は、教育やそれまでの環境での積み重ねによって
自信や自尊心を身につけ、
初めて問題に対して頑張って解決することを覚える。
初等教育も満足に受けられず、日雇いの仕事に従事してきたたために、
そういった機会に恵まれなかった彼女たちは、
コミュニティファクトリーで働きながらライフスキルを学ぶことで
自信や自尊心を育て、自らの知恵で生きていく力を得る。
そして彼女たちの成長の物語がSUSUの商品には込められている。
手にとっていただいたお客さまには、
SUSUの商品を通して、作り手の女性たちのエネルギーを感じてもらいたい。
いぐさ織をする女性たち。
SUSUが売れるということは、
より多くの女性にライフスキルを身につける機会が提供できるということだけではなく、
少しずつ彼女たちが生きやすい世の中をつくっていくという挑戦でもある。
大それた言い方だけれども、資本主義をもう少し柔らかくしていく挑戦なのだ。
資本主義は一人一人の物の買い方で作り上げられている。
もし作り手の女性たちのエネルギーが
買っていただいたお客様を励ますことができたらどうだろうか。
SUSUのトートバッグは単なるトートバッグ以上のものになり、
商品の向こう側になにが起きているのかを考えて買うことのよろこびを生み出せる。
そしてそれが今後のものの買い方が10回に1回でも変わるきっかけになれば、
それは企業を変える力となる。
つまり、人の成長に寄り添う企業の商品が買われることが増える。
そうすれば作り手の成長に力を割く企業が増え、良い職場が増えていくきっかけとなる。
作り手の成長と合わせて企業の変革をもたらすことができれば、
少しでも資本主義をやわらかくすることにつながっていくだろう。
一朝一夕でできることではないが、SUSUにそんなビジョンを描いている。
そのためにSUSUでは、商品を届けるだけでなく、サービスを提供することも考えている。
例えば、日本でのワークショップ。
買い手が作り手の女性たちに共感できるきっかけを提供するワークショップができれば、
作り手の想いや苦労を自分に引き寄せて考えることができるようになる。
買い手も作り手もこの社会の中でともに頑張っている仲間であると思えたとき、
作り手の女性たちのエネルギーがより買い手に届きやすくなっていく。
同時に企業の変革や学校教育の変革にも団体として積極的に関わっていく。
私たちが開発し提供しているライフスキル教育はカンボジアのすべての人、
いやもっと多くの国で提供されていくべきものになる可能性があると信じている。
今まさに公教育改革のプログラムをカンボジア政府に提案しようとしている。
もしライフスキルが育まれる場が少しでも増えれば、
より前向きに人生をワクワクしながら生きる人たちが増えていく。
SUSUとライフスキル教育のチャレンジ、そしてそのすべての始まりの現場であり、
開発の拠点となるコミュニティファクトリー。
そこから僕たちは新しい物語を紡いでいこうとしているのだ。
SUSUの商品。
▸SUSUオンラインショップ http://shop.susucambodia.com/
その中で僕たちは新しいビジョンに向かってより自由に大きく進んでいきたい、
それが別組織にする最大の理由だ。
ただ、全く赤の他人になるわけではなく、
兄弟や、同じ村や組にいるような、そんな関係を築いていきたい。
ライフスキル教育は一人一人の成長や成熟を助ける社会の基盤である。
それは子どもが売られない世界を作るには必要な基盤となるはずだ。
だから僕はかものはしの理事として残りたいと考えているし、人の交流はなくならないだろう。
2つの団体がそれぞれの役割を果たすことで、
カンボジア、そしてインドにより良い社会を作っていけるような
そんな新しい関係が築けるのを楽しみにしている。
ファクトリーで働く女性、経営チームの一員Vuthikと。
ライター紹介:青木 健太
かものはしプロジェクト共同代表。2002年、東京大学在学中にかものはしプロジェクトを村田、本木とともに設立。2009年からはカンボジア事業を担当し、コミュニティファクトリー事業を統括する。
2016年度は、カンボジア事業が大きな成果を出すことができた1年になりました。
その中でも工房で働く女性たちがライフスキルトレーニングを通じて
大きく成長できたことは、SUSUの商品の成長にも繋がりました。
今後も商品とトレーニング両方の質を高めていくことで
より多くの女性たちが社会で活躍できるように取り組んで行きます。
今回は、年次報告書2016より抜粋し、
共同代表青木健太が、今後のカンボジア事業について語った記事をお届けします。
「ライフスキル教育は、子どもが売られない世界をつくるために必要な基盤となるはずだ。」
と言い切る、青木の「自立のその先に描くビジョン」を是非お読みください。
2016年度年次報告書はこちら
カンボジアに残る問題とは
私たちが2002年に団体を始めたときと今のカンボジアはすっかり違う国になった。10年以上にわたって7%の経済成長率が続き、国全体で現在12の経済特区が稼働し、
海外企業が進出、雇用は確実に増えている。
そもそも2002年の事業開始以来、
NGOとして雇用をつくらなければならないと考えてきた僕たちも、
徐々にNGOに求められる役割が変わってきていることを感じていた。
ある忘れられない台詞がある。
知り合った大企業の方から
「青木君、年末までに5,000人採用したいから、
毎月100人でも人を紹介してくれないか。きちんと雇用するから」
という話を聞いたときである。
当時一人でも多くの人を雇おうと四苦八苦していた僕たちにとって、
まさに時代の変化を実感する瞬間であった。
仕事そのものが企業によって作られ、
子どもが売られる問題が解決に向かってきている。
その一方で、自分たちの活動を振り返り、
ともに働いていた村の女性たちとの対話を通じて、
自分たちの経験を活かして
どうカンボジア社会に貢献することができるのかを考え続けた。
すべての人に「前向きにワクワク生きる」人生を
そして、その一つの答えが、ライフスキルであった。それに気づくきっかけになったのは
コミュニティファクトリーを卒業して企業に就職したある女性に起きた出来事だった。
彼女は、都会の工場で働きはじめ、給料も農村の平均月収にくらべれば
4倍にもなる良い仕事につけたと僕たちは喜んでいた。
しかしそんな彼女はたった4日でその工場を辞めてしまったのだ。
都会で住む家がみつけられない、一緒に働く人と仲良くできない、
といった問題を解決することができず農村に帰ってきてしまった。
新しい環境に慣れ、人との関係を作りながら、問題を解決して前に進む力、
それが十分に育っていないとカンボジアの発展の恩恵を受けることも難しいのだと
僕たちが思い知らされた苦い経験だった。
彼女は幸いまたコミュニティファクトリーで働くことができたが、
果たして他の人はどうか。
そうして僕たちは、その力をライフスキルと名付け、
それを身につけ、「前向きにワクワク生きる」人生を
すべてのカンボジアの人たちが送れるようになってほしいと考えた。
それが僕のライフミッションであると
確信できた大きな出来事であった。

ワークやゲームをベースにしたライフスキルトレーニングを楽しむ女性たち。
コミュニティファクトリーとSUSUを通して描くビジョン
今コミュニティファクトリーは、働く場でありながらもより学ぶ場へと変化し、
"ものづくりを通した人づくり"をおこなっている。
そこで、女性たちが身につけるのは、
社会へ出て活躍するための力、ライフスキルだ。
人は、教育やそれまでの環境での積み重ねによって
自信や自尊心を身につけ、
初めて問題に対して頑張って解決することを覚える。
初等教育も満足に受けられず、日雇いの仕事に従事してきたたために、
そういった機会に恵まれなかった彼女たちは、
コミュニティファクトリーで働きながらライフスキルを学ぶことで
自信や自尊心を育て、自らの知恵で生きていく力を得る。
そして彼女たちの成長の物語がSUSUの商品には込められている。
手にとっていただいたお客さまには、
SUSUの商品を通して、作り手の女性たちのエネルギーを感じてもらいたい。

いぐさ織をする女性たち。
SUSUが売れるということは、
より多くの女性にライフスキルを身につける機会が提供できるということだけではなく、
少しずつ彼女たちが生きやすい世の中をつくっていくという挑戦でもある。
大それた言い方だけれども、資本主義をもう少し柔らかくしていく挑戦なのだ。
資本主義は一人一人の物の買い方で作り上げられている。
もし作り手の女性たちのエネルギーが
買っていただいたお客様を励ますことができたらどうだろうか。
SUSUのトートバッグは単なるトートバッグ以上のものになり、
商品の向こう側になにが起きているのかを考えて買うことのよろこびを生み出せる。
そしてそれが今後のものの買い方が10回に1回でも変わるきっかけになれば、
それは企業を変える力となる。
つまり、人の成長に寄り添う企業の商品が買われることが増える。
そうすれば作り手の成長に力を割く企業が増え、良い職場が増えていくきっかけとなる。
作り手の成長と合わせて企業の変革をもたらすことができれば、
少しでも資本主義をやわらかくすることにつながっていくだろう。
一朝一夕でできることではないが、SUSUにそんなビジョンを描いている。
そのためにSUSUでは、商品を届けるだけでなく、サービスを提供することも考えている。
例えば、日本でのワークショップ。
買い手が作り手の女性たちに共感できるきっかけを提供するワークショップができれば、
作り手の想いや苦労を自分に引き寄せて考えることができるようになる。
買い手も作り手もこの社会の中でともに頑張っている仲間であると思えたとき、
作り手の女性たちのエネルギーがより買い手に届きやすくなっていく。
同時に企業の変革や学校教育の変革にも団体として積極的に関わっていく。
私たちが開発し提供しているライフスキル教育はカンボジアのすべての人、
いやもっと多くの国で提供されていくべきものになる可能性があると信じている。
今まさに公教育改革のプログラムをカンボジア政府に提案しようとしている。
もしライフスキルが育まれる場が少しでも増えれば、
より前向きに人生をワクワクしながら生きる人たちが増えていく。
SUSUとライフスキル教育のチャレンジ、そしてそのすべての始まりの現場であり、
開発の拠点となるコミュニティファクトリー。
そこから僕たちは新しい物語を紡いでいこうとしているのだ。

SUSUの商品。
▸SUSUオンラインショップ http://shop.susucambodia.com/
なぜ、かものはしを離れるのか
カンボジアでは、すでに子どもが売られる問題は解決に向かっている。その中で僕たちは新しいビジョンに向かってより自由に大きく進んでいきたい、
それが別組織にする最大の理由だ。
ただ、全く赤の他人になるわけではなく、
兄弟や、同じ村や組にいるような、そんな関係を築いていきたい。
ライフスキル教育は一人一人の成長や成熟を助ける社会の基盤である。
それは子どもが売られない世界を作るには必要な基盤となるはずだ。
だから僕はかものはしの理事として残りたいと考えているし、人の交流はなくならないだろう。
2つの団体がそれぞれの役割を果たすことで、
カンボジア、そしてインドにより良い社会を作っていけるような
そんな新しい関係が築けるのを楽しみにしている。

ファクトリーで働く女性、経営チームの一員Vuthikと。
かものはしプロジェクト共同代表。2002年、東京大学在学中にかものはしプロジェクトを村田、本木とともに設立。2009年からはカンボジア事業を担当し、コミュニティファクトリー事業を統括する。